忙しそうに手を動かし、床を掃除してる神楽くん。


その姿に、胸がきゅんと縮まる。

神楽くんの笑顔が一番好きだけど、ああやって真剣に何かに取り組んでる姿も好き、だなぁ。




ボケーっと見惚れていたそんな時、モップを動かしていた手を止め、ふいに神楽くんがこっちに向いた。

「…菊井?」

目が合って、突如心臓が騒がしくなる。


モップを持ったままの神楽くんが近付いて来て、緊張が体中を駆け巡ってゆく。



「何してんの、そんな所で。」

「あ、えっと、お、おトイレにっ!」

ジタバタと身振り手振りを加えながら、不自然に笑顔を向けた。


ううう、どうしよ!
何か気まずいよぉぉ…。


とりあえず話をしなきゃ、そう思いながら俯いて口を開く。


「な、何かごめんね!バイト中なのに押し掛けちゃって、」

重くならないようにえへへ、と誤魔化すように笑うと何故か泣きそうになって唇を噛みしめた。


ダメだ、上手く笑えない。


「迷惑だよね、あたしたち…。でももう、帰るから!」