「あら、こんにちは。野口君」
「あ、こんにちは。お邪魔します」
「いえいえ〜。どうぞ遠慮なく」
「はい、ありがとうございます」
リビングにはお母さんがいて、なんとも礼儀正しい挨拶が目の前で行われた。
毎度毎度、さすが先輩だなぁって思う。
そして少し話をした後、あたしの部屋に向かった。
ーーーガチャ
扉を開けて中に入ると、先輩はすぐにベッドへダイブした。
いやいや、あたしのベッドなんですけど…。
「先輩、疲れてるでしょ?」
先輩は疲れてる時にあたしのベッドにダイブするんだ。
「よくわかったね。どちらかと言ったら疲れてるかな」
でも本人は、その事に気づいていない。
そこも可愛いんだけどね。
「ところでさぁ」
「なに?」
しばらくして、先輩が口を開いた。
「先輩って呼ぶのやめて、竜樹って呼んでよ」
「えぇ!……うーん、そこまで言うなら……………やだ」
「なんで⁉︎」
だって恥ずかしいもん。
しかも今まで先輩って呼んでたから、急に変えるのもちょっとね…。
「呼んでよ」
でも先輩は、いつになく真剣な顔。
このやり取りがしばらく続いたけど、無駄だと思ったあたしは、渋々呼ぶ事にした。