「あっちにも行ってみよう」という私の言葉に、蒼斗は飲み終わった缶をゴミ箱に捨て、私たちはまた歩き出した。

「あっちに行って驚いたこととかある?」

「ありすぎて驚くのが面倒になった」

「なにそれ」

「驚いたっていうか、最悪なことはあった」 

「何があったの?」

「転校した初日に算数のテストがあった」

「うわー……。それは災難だったね」

「だろ! そう思うだろ!」

私たちは、まるで開いた時間を埋めるように、言葉を交わした。

蒼斗が去った後のこと、小学校の同級生のこと、潰れてしまった駄菓子屋のこと、私の友だちのことなど、たくさんのことを蒼斗に話した。

蒼斗も身近なことを話してはくれたが、私が友だちのことにふれると、無理やり話題を逸らさせようとした。

「なんで?」と尋ねると、苦笑して「引いてほしくないから」と言った。