周りに視線を移すと、手をつないで歩くカップルの姿が見えた。

連れ立っている私たちも、カップルだと思われているのだろうか。

家族旅行でここに帰って来ているから、花火大会に行かないか? という蒼斗からの電話が今日あった。

一応OKはしたが、今になって後悔した。

来るべきてはなかったと。

OKをしなければ、少しは仕返しになっていたかもしれない。

私の悲しみとか、怒りとか、わかってくれたかもしれない。

「なぁ、ゆき」
橋にさしかかったとき、蒼斗の口が開いた。

私は彼に視線を向けた。

「えっと……その……」
バツの悪そうな表情を浮かばせる。

「……悪かった」

「なにが?」

「……お前になにも言わないで、引っ越したこと」
 
私は視線を下に移し、黙った。

「ゆ、ゆき?」

「もう、怒っていないよ」

いや、本当はほんの少しだけ怒っている。
なんで帰ってきたの? という気もある。
でも、今でもその怒りを引きずっていても仕方ないことだ。
怒号をあびせたところで、何も変わらないし、逆にもっと疎遠になる。

胸の内に閉まっておこう。

「今更怒ったって、仕方ないじゃん」
笑って、そう口にした。

「ありがとう。本当に悪かった」

「もういいよ。気にしないで」

気取って見せてはいるが、今の私はちゃんと笑えて、いるのかな?