「おまえはどうなの?」

「なにが?」
私はまた、ラムネを喉に流し込んだ。

「蒼斗のこと。好きなんだろう」

取り乱し、ラムネを吹き出しそうになった。

「な、なんで!」

「わかりやす。顔真っ赤」

頬に手を当てた。ちょっと火照っている。

「前から知ってた。ゆきが蒼斗のことが好きなの」

「す、好きなわけないじゃん! 誰があんな奴のことなんて!」

「もっと素直になれよ、ゆき」

「好きじゃない」と否定する語が何故だか喉の奥につっかかり、発することできなかった。

ラムネを握りしめた。

素直になっていてら、築き上げてきたものが全部、跡形もなく壊れる、と私は心の中で呟いた。

本当は私だって……。

「ナオヤはどうなの?」

「俺の好きな人か?」

「うん……」

つい最近、こうして二人きりだったとき、ナオヤは私に好きな人がいることを話してくれた。
私が冗談で「恋していないの」と尋ねたのが発端だ。 
ナオヤはさらりと「いる」と答え、「そいつには好きな人がいるんだ」とも言った。

「進展はしてねぇよ。なんにも変わってはいない」

「そっか……。実るといいね」

「おまえもな」

ナオヤは苦しそうな微笑みをした。