「卒業式終わったら、焼却炉の横の階段で待ってるから。それまでは、俺の大事なかわいい生徒だ」

その意味がよくわからなかったけど、先生との約束ができた。

「卒業式終わったら、あの場所に行くね」

「あぁ。まだまだ先の話だな。困ったら、いつでも俺が助けてやるから。あくまでも教師として、だけど」


そう言って、先生は黒いジャージのポケットからいちごキャンディーをひとつ出して、私の手のひらに握らせた。

手と手が触れて、私はこの想いが勘違いでもなく錯覚でもなく・・・・・・初恋なんだと確信した。



先生、大好き。


黒いジャージの大きな背中。

真っ黒なバイク。

いちごキャンディー。

空を見る優しい瞳。

低い声。

頭 ポンポン


「先生、ずっと守ってね」

「ああ、背中についてるからな」


私の背中についてる妖怪は、今日も私の心を少し開かせて、笑顔をくれる。



見上げた空に浮かぶふたつの雲は、おじいちゃんと先生のお母さんかもしれないね。





【END】