「お母さん、私頑張るから、もう少し気持ちの整理がついたらその人に会うよ」
震える背中を撫でながら、妙に落ち着いている自分を冷静に分析できていた。
これが、心を少し開くということ?
勇気を出して、ぶつかることで・・・・・・こんなにも楽になれるなんて。
「その先生に、お礼を言わなきゃいけないわね。ここねのことを支えてくれてるのね」
「うん。すごい安心できる先生。私も、あんな風な大人になりたい。人に安心感を与えられるってすごいよね」
「私、彼と結婚する気はないの。ただ、大好きなここねに、会ってほしかっただけだから」
聞く耳を持たずに飛び出した自分を恥ずかしく思う。
勝手に、再婚するんだと思い込んでいた。
「ここねは、強くなったわね。私が知らないうちに」
「そんなことないよ。ほんの2週間前までは、消えてしまいたいくらい、弱かった」
「ごめんね、ここね」
私とお母さんの間にあるものは、そう簡単に消えるわけじゃない。
でも、何かが少し変わったことだけは確かだった。
ありがとう。
先生。
誰よりも優しくて、誰よりも強い先生のおかげで、私も前に進めたよ。
眠る前に窓から月を見た。
そこには、涙を流す先生の姿が浮かんでいた。
今度は、私が先生を助ける番だ。