1限目は、また化学だった。

私はひじをつき、窓から下を見ていた


高垣先生の黒いバイクを見つめる。

化学のおじいちゃん先生の声が子守唄のようで、あくびが出る。


あ、来た。

高垣先生は、上を見上げた。


目が合う。

この距離なら、目をそらさずに見つめることができる。


先生、大好き。


え?

何?

今、私何を思った?

好きって?


違う違う!




高垣先生は、片手を上げて、私に手を振った。

この時間、先生は授業がなくて見廻り担当なんだ。


助けて。

先生。

私、また居場所がなくなっちゃうよ。

お母さん、結婚しちゃうかもしれない。

あの家に知らない男が入ってきて、お母さんと仲良くしている姿を見せられるんだ。

私のことなんて、ますます見てくれなくなる。


私が、時々とてつもなく寂しくなることにも気付かず。

私が、時々このまま消えてしまえたらいいのに、なんて思ってることも知らずに。