私は、みんなの憧れのシュートなんて知らない。

真剣に私に向き合ってくれた高垣先生しかしらない。

母とのあの出来事の後、私は2日間学校を休んだ。
運良く、風邪を引いた。

「せんせ~!おはようございます~」

キャーキャー騒ぐ女子の声を聞きながら、私は見ないようにして追い抜かす。

真っ黒なバイクは、朝日がよく似合う。
ヘルメットを脱いだ高垣先生が見たくて、少し振り向いてしまう。


髪が乱れた先生は、恥ずかしそうにみんなに挨拶をしていた。
目が合いそうになったので、急いで前を向き歩き出した。


高校で一番人気の体育教師のシュートになんて興味はない。

私のことだって見えてないんでしょ?
女子に囲まれてキャーキャー言われるシュートは、私とは別世界で生きているように見える。

それなのに、どうしてあの日、私の気持ちをわかってくれたの?