先生があの日に話してくれたこと、他の生徒にも話したりするの?

こっそりいちごキャンディーをあげたり、するの?


好きとかじゃないし、教師に恋愛感情とかダサいし、全然そんなんじゃない。

ただ、私は高垣先生に救われた。


だから、何か恩返しができたらいいなって思う。

そんな力、私にはないけど。

先生も、幸せじゃないような気がした。
あの日、空を見つめる目に私と同じ寂しさを感じたのは、気のせい?



バイクを撫でる優しい手と眼差し。

声をかけてはいけない、かけられない空気でそっとその場を離れようとした時だった。



「あっ!不良娘だ!」

振り向くとバイクのミラーに太陽が反射してまぶしくて、目があけられなかった。

その向こうにいる先生は、どんな顔をしているんだろう。


「不良教師だ!」

と言い、歩き出す。

呼び止めてくれたらいいのに、と思いながら。


「こ~こねちゃん」

振り向くと、高垣先生がバイクから離れ、私の後ろを追いかけてきてくれていた。

ここねって名前を覚えてくれていた。