真っ直ぐに前を見据え、竹刀を振り上げると
「やあ…面!」
素早くかつキレのある動きで駆け抜けていく。
流れるように美しい動作と凛とした姿。
一瞬の出来事が頭に焼き付いて離れなくなるー…。
すごいきれいな動き…。
まるで芸術作品を眺めているかのように、見とれてしまっていると…
「一(はじめ)っ!」
隣にいた平助くんが、パタパタと男の人の元に走り寄っていく。
「先に稽古するなら、俺にも声かけてくれてもいいのに!」
「悪い。まだ寝てるかと思ってた…」
「起こしてくれたら三秒で起きるよ!」
きらきらとした笑顔を浮かべる平助くんに、ポーカーフェイスだった男の人も口元を緩めている。
二人とも…楽しそう。
あの人と平助くん…仲いいんだな…。