近藤さん、伊藤さんが上座に置かれた紫色のざぶとんに腰掛けると、話が再開された。


「伊藤さんは昔、平助が通っていた道場の先生でな。

北辰一刀流(ほくしんいっとうりゅう)という流派で、剣も強く知識もある。

新選組に迎え入れるにあたって、この上ない人なんだ」


何度もうなづきながらそう言った。


近藤さん……。


目を輝かせながら話しているのを見ると、近藤さんは伊藤さんをすごく尊敬しているんだって伝わる。


でも私はあの人を好きになれない。


だって……。


伊藤さんの加入によって、新選組は大切な人を″2人″も失ってしまうのだから……。


胸が苦しくなって、伊藤さんの挨拶なんかまったく頭に入らなかった。


そうしているうちに、気づけば会はお開きになっていて。


それぞれの持ち場に戻るために、隊士たちが部屋を出ていく。


私も戻らなきゃー…。