まさかその人って……
「伊藤(いとう)さんって言うんだけどさ。
その人がつく参謀って役職は総長の上。
つまり山南さんより偉いらしいぜ?」
やっぱり……!
伊藤甲太郎(いとうかしたろう)。
名前を聞いただけで胸がキリキリと痛んで、手でギュッと押さえた。
「わかりました。
とにかく、急ぎましょう…!」
沖田さんの声に続いて私達は広間へと向かった。
広間はすでに隊士達でびっちりで、局長、副長を前にして、向き合うように隊士たちが正座している。
沖田さん達は幹部が並ぶところに、私は後ろの隅のほうに座った。
「全員揃ったか。
では紹介しよう……!」
近藤さんが襖を開けると、少し髪の長めの男の人が入ってくる。
年は近藤さんや土方さんと同じくらいに見える。