「キャッ。」
「あらごめんなさい。指がすべっちゃって。
わざとじゃないのよ。スカートが台無しね。」

店員さんを呼んで拭いてもらって、
テーブルは綺麗になったけれど
母のスカートは綺麗にならずシミになった。

「どうしましょ。私、クリーニング代出すわ。」
おばさんが困惑顔で言った。

「いえいいんですよ、心配しないで。
もっと運動神経がよければ
濡れずに済んだかも知れないのに。」
母が笑って答えた。

「いえいえ、避けるのなんて無理よ。
コーヒー熱くなかった?
本当に私ったらそそっかしいんだから。
亭主によく言われるのよ、
もっと落ち着いて暮らせないものかねってね。」
申し訳なさそうに言った。