「さの字に一本加えてごらん。
きになるだろ。」

「ほんとだ。それに決まり!」

赤ちゃんには父親がいなかった。
妊娠した事すら知らないで
何処かに消えてしまったのだった。
だからその分、
いや、それ以上に幸せに恵まれて欲しいと思った。

「今日はゆっくりお休み。
大役を果たしたんだから。」

「うん、ママもね。色々心配かけたから。」

「そうだね。」
笑って「でも元気に生まれてきてくれて
今までの苦労は吹っ飛んじゃったよ。」

ふたりはいつまでも喜びを噛み締めていた。