河川敷から階段を下りて、住宅街へと出る。

それでも、水城くんは手を離す気配はなかった。

住宅街なら転ばないと思うんだけど、このままでいたいからわたしも離せずにいた。

「先輩と出逢ってから、色んな事ありましたね」

「なにそれ?しみじみ。おじいちゃんみたい。日本昔話?」

彼のゆったりした口調がおかしくて笑う。

「いつも、泣いたり笑ったり怒ったり。あっあと、吐いたり」

「だから。吐いたりは余計だよ」

前もそんな会話をしたな。あのときは確か、わたしがそう言っていた。

恨めしそうに睨んでみた。

「そんな顔で見ないで下さいよ」

「そういうこと言うからです」

「先輩は、感情を隠そうとしても、すぐ顔にでるから、見てて面白かったです」

面白いって。芸人じゃないんだから嬉しくもなんともないよ。

「あのー。誉めるところ間違ってるけど」

「そうですか?俺、よくなに考えてるかわからないって言われるから、俺から見たら羨ましいですよ」

「とか言って、馬鹿にしてるな、その笑い顔」

薄暗い中で、含み笑いをしている彼に言う。今日は、そんな顔でも愛おしく感じる。