第4日曜日になった。
お昼すぎには、窓から、今日の花火の決行を告げる花火が打ち上がるのが見えた。
19時から花火が始まるので、お姉さんのマンションの下で、40分に待ち合わせをすることにした。
朝起きると、浴衣一式がドアの前に置かれていた。
あの日の喧嘩から、まともに母とは話していない。
薄紫に大きな牡丹が描かれた浴衣を羽織る。
鏡を見ながら、着付けをする。
時間がなかったので髪の毛を適当にコテで巻いて、逆毛を立ててお団子にした。
大きい花のついたピンを付けてごまかして。
階段を降りたところで、リビングを出た母と出くわした。
母はわかりやすく怪訝そうな顔をしたあと、冷静を取り繕うように言った。
「浴衣、着たの」
「うん」
「あんたに着付けなんか教えたことなんてないのにね。一人で着付けなんて、出来たのね」
「うん」と言って、草履の鼻緒に足の指を入れる。
「あんたは、勝手に大きくなったみたいね。一人で、なんでも出来て」
振り返らず、なにも言わずに玄関のドアを開けた。