翌日、学校に行くと梨花と話すチャンスは朝からなかった。
「おはよう」と声をかけようと近づいても、わたしを避けるように席を立ったり、休み時間も一人でどこかに行ったりしていたからだ。
「ちょっと、わたしまで避けられてるよ。巻き添え」と美和子がお昼休みにぼやいた。
「ごめん。わたしもなかなか話しかけられなくて」
「まあねえ。気まずいのはわかるけど。早く仲直りしなよ。わたしも、協力するけどさ」
「ありがとう。謝るよ、ちゃんと」と、言いながらも、謝るってなにを話せばいいのかまだ掴めてさえいなかった。
「亮太のこと、好きなこと言わなくてごめんね」とか。
「梨花もわたしが好きなこと気づいて苦しかったよね」とか。
「でも、亮太と付き合ってたんだからわたしより苦しくなかったよね」とか。
そんな科白しか思いつかなくて、連想させていくと、結局、嫌みな言葉に変わってしまう。
つくづく卑屈だな。自分でも実感してしまった。
メールでも送ろうかと思ったけれど、こんな謝る言葉も見つかっていないわたしの文章なんかより、きっと直接話したほうがいいことはわかっているから、そうすることはやめた。