荷物をまとめて、帰る準備をする。

みんなから、
「おめでとう」
「すごかったね」
と、声がかかる。

もちろん、僕だけでなくほかのメンバーにも。

僕はそっと、その輪を抜け出した。

そして、ふと気づくと君が目の前にいた。











「金メダルおめでとう。
すごく速くて、びっくりしたよ」

そう言って、にっこりと微笑んでくれた君。

「ありがとう」

そう答えてから気付く。

僕が欲しかったのは、いま首にかけている金メダルじゃない。

君が僕だけに向けてくれる、その笑顔が、1番欲しかったものだと










  『陸上部』編·完