「どうしたんですか?」
顔を身体と同じ方向に向き直しこちらを見た彼は、嬉しくて顔を緩めながら自分を見ている私を見て、そう問いた。
(いえ。雨、似合いますね)
私は(いえ。)と言いながら小さく首を振った後、窓を閉めたままでは到底届かぬであろう事は重々承知の上で、彼に言葉を出した。
「えっ・・・あ!そうか。俺傘差してない!!」
(え・・)
届かぬはずの言葉へ返す様に、否、完全に返しながら何故かあたふたとし出した彼。
「変な奴だと思って笑ってたんですね。わー・・、恥ずかしい」
(そうじゃないですよ。変な人なんかじゃないですよ)
そう言葉を出してあげる事も出来ずに、届いた事に驚いて、返ってきた事に吃驚して。
未だにあたふたとしている彼をボーッと、ジーッと、見ている事しかできなかった。