「初めて聞いたな。君の声」
「ふふ。想像してたのと一緒だった?」
窓という僕らを繋ぐ透明な壁は、まるで存在しないかの様にクリアに声を、姿を、想いを通す。
「一緒だった。ていうか知ってた。」
僕の嘘を二人で笑う。
すると、上から彼女に紙が降ってきた。先程風の気流に乗って旅に出た紙だった。
「おかえり」
彼女がその紙を掴むと、一枚の紙は一枚の羽根となり、彼女の手の中でほどけて消えてしまった。
「あの紙は、死んだ後の私の想いが形になったものだから」
そうやって、均衡に保たれた世界を崩さない様に、死後に生まれたモノは徐々に全て消えてしまうんだそうだ。
モノも、記憶も、想いも、全て───
その人の本当の最後の日に。
「今日で四十九日。私の本当の最後の日だから、少しずつ、少しずつ、消えているの。
だから、意味はないんだけれど──・・・」
彼女は次の言葉を発する事なく、目を閉じ歌い始めた。