どれ程の時間が流れたのだろう。
分からない。
分からないけれど、一羽の鳥が私と男の子の間を雨翔け、彼の横を通り過ぎた時、
今までは見えなかった顔が横顔として一瞬見えた。
雨に全てを隠した彼が、
泣いていたのかどうかは私には分からないけれど、
切羽詰まった様な感じでも、絶望している感じでもなく、
ただ、本当に何かを悲しみ、少しだけ恐れている様な印象だった。
(どうして、ここに・・・)
まだ降り続いている雨の中、私自身もまだ彼を見続けている。
何故そんなに惹かれているのか、何も分からないまま。
ただ、やっと動き出した彼と視線が繋がった時、
私の心は今までにない程加速して動き出した。