空からは涙雨でもない、雨礫(あまつぶて)でもない、ただ降り続く雨の中。

はじめは分厚く、巨大で、遅く流れていた雲は少しずつ西へ移動し、今は灰色でうっすらと太陽の光が雲に透けて見える。

雨の声を出しながら降り続ける雨は、もうすぐ止みそうな雰囲気で。


雨や雲だけでなく、時計や風。

道路に増えだす車や鳴き出す鳥。


色んなモノが進んでいて、進んでいる事を知らせてくれる。



そんな中に居る男の子はあまりに景色に似合っていなくて・・・



少しずつ明るくなっていく景色の中、男の子だけが変わらなくて。


(あなたは、何を思っているの?)

(違う―――・・・)

彼は、何も思っていない。きっと何かを―――


(あなたは何を想って、居るの?)


男の子と私の間には見えないもの・見えるもの沢山のものがある。

それは空気であり、雨であり、距離であり、空間であり。



そして、窓。


空を、街を、景色を見ていた私はいつの間にか、ずっとそこにいる男の子を見ていた。