「今日は三日月なんだな」



あなたがそう呟く。

私は頷く。


「三日月ってなんか意味もなく怖かったんだけど、

 今日は、落ち着く」

空から彼へと見るものをかえると、彼も見るものを私へと変えて。

目が合った瞬間に恥ずかしかったのか、彼は目を逸らしてしまったけれど、

「ここに、いるからかな・・・」

再び空を見ながらそう言葉を上へと向かって静かに飛ばせた。



街灯のない、部屋の明かりもない。

満月よりも少ない三日月の光では彼の顔色はわからないけれど、

はっきりとは見えない彼の表情はわかる。


全てを照らすことはできず、全てを隠すこともできない。

中途半端な光の塊は今も少しずつ進んでいて。






(あなたと、あの空が見たい)



これからもいくつかの願いは溢れてくるだろう。

けれど、本当に最後に願う願いがわかった。



その光は私の中にあった、最後の願いを照らし気付かせるには十分な量で。


私も、再び空へと視線を戻した。





(あなたと、あの空が見たい)