僕は、向こう側の拍手の隙間から聞こえた木の実が潰れた様な音に、上半身を起き上げた。

「?」

けれど目に映るのは、頭上から美しく散る花びらが、そよ風に乗って手入れの行き届いた中庭を染める風景だけ。

潰れた木の実は、見つからない。

首を傾げた後再び寝そべると、枝の先端で、まだふくり、と膨らんだままの蕾が空に伸びていた。

咲いたら大きそうだななんてぼんやり見ていると、強く風が吹いているわけでもないのにがさがさ、とそれが大きく揺れた。