ビニールやポリエチレンの傘が回る通学路で、僕の持つ傘だけが浮遊していた。

母が学生時代に使っていた唐傘を譲り受けたもので。

物持ちの良い母の物の中でも、より丁寧に扱われていたそれは、何十年も使われてきたとは思えない程に美しかった。

前後左右、傘、傘、傘。

自分らしさを主張しながら回す皆の中、僕は誰よりも過剰に主張して漂っていたんだ。

程度の良い個性は憧憬されるけれど、度を超えた個性は敬遠されてしまうもので。

気付くと、僕の周りにほんの僅かな見えない壁が出来ていた。