”うひょっ”
「キミって学習しないよね」
ぺたん、とくっついた地面から顔だけをあげて、僕を見て笑う。
僕が寝そべるキミの横を悪態をつきながら通り過ぎれば、またキミは僕の名前を呼んで駆け寄ってくる。
”千尋くんおはよう”
僕は背が高い。キミは背が低い。僕とキミの身長差は30cmはあったから、必然的にキミの歩調は早足になる。
それでも隣につくまでにまた差が開いてしまうから、斜め後ろからの挨拶に、僕はうんと返す。
すると、キミはまるで宝物を見つけた子供みたいに走って僕の前まで出て、いつもこう言うんだ。
”千尋くん 好きっ”
しなる弓の向こうで僕を射貫くキミの目に、僕は立ち眩みを起こす。