それまでの僕は、その事にずっと気づかなかったけれど。

本当は、はじまりの日から、僕は、キミを、少しずつ好きになっていってて。

キミの飾り一つない白い小さな手も。唐茶の癖っ毛も。笑うと弓の様にしなる大きな目で僕を射抜く黒目も。黄色の絆創膏で隠れた膝小僧も。

何より、必要不必要の区別なく、花が歌う声にはじめて名前を呼ばれた時から、キミに恋をしていたんだ。

”自分の恋に1年も気づかないなんて”
”どどどどどどどどどど鈍感くんだね”

今でもキミは、そうやって僕の中にいて笑っているのに。僕だってキミの世界の中にいるのに。


もう、呼ばれることはないんだ。