「姫?」

福嶋の肩の向こうからちらりと見えるリカに、自覚を持って口角をあげた。

そしてその口のまま、福嶋にも同じ顔で笑いかける。

「ここはもうはるか先生と私で大丈夫だからリカと一緒に戻って?」

出来るだけ言葉が途切れないよう滑らかになるようにも意識しながら。

「は?何言ってんだ白雪」

いつもと変わらずに平常運転を崩さないままの福嶋から逃げてしまわないように意識しながら。

たくさんの自覚と意識の中で話すのは、とてもしんどいことを知った。

「だから先に戻って」
「白雪、」
「お願い」
「…分かった。行くぞ」


リカと福嶋の背中が遠ざかり、たった一つのロウソクの灯りが闇へと消えてしまうまで。

自覚も意識も決して手放さなかった。