少し手を前に出せばすぐに届いてしまうきょりに福嶋がいる。


”ダメ。ダメよ”


そのきょりに、また私の中で私の声が私を制止する。


”離れなきゃダメ。失ってしまう前に”


先ほどよりもさらに大きな声で。何度も何度も。風にざわめく草の声のように。

「福嶋、」

その声に促されるままに福嶋の名前を呼んだ私に、もちろん福嶋は振り返る。

「ん?」
(、)

あまりのきょりに少し呼吸をするのが難しくなってくる。