「福嶋、」
少しずつ声量が弱まっていく徳田の声が途切れた時を見計らったかの様に、白雪が俺を呼んだ。
その声に沈む彼女を放って振り向けば、白雪は瞼を僅かに震わせて。
そして俺の向こうにいる彼女にあまり心地の良くない笑みを向けて、その笑みのまま俺にも笑いかけた後に。
「ここはもうはるか先生と私だけで大丈夫だからリカと一緒に戻って?」
突然よく分からない事を言い出した。
先程の絞り出す様な声とは正反対の、滑る様な声。
先程までのぎこちなさとは正反対の、滑らかな表情。
「女同士であんな暗い道危険でしょう?私ははるか先生と車で戻るから」
いつもの風に戦ぐ花の声とも違う、それよりも更に滑らかな声。
「白雪、」
確実にいつもとは違う目の前の白雪に、何を考えているのか微細な変化も見逃さぬ様に強く白雪を見る。
「お願い」
けれど真っ直ぐに俺を捉える白雪は、その欠片すら決して掴ませず。
そんな心地の良くない雰囲気の中で強く懇願してくる白雪に。
「…分かった。行くぞ」
クラスメイトの俺は従うしか出来なかった。