それでも確かに、私の中にも風が吹く。
「ほんとうはね、」
火は消せない小さい風は、灯りを撫でながら福嶋と私の髪を優しく揺らす。
火の灯りは緩やかで優しくて、どこか懐かしくて。
風の音は鼓動の音と溶け合って通り抜けていく。
「いつだってフられるのは私の方、」
だからかもしれない。否定するのをやめた誰も信じてくれたことのない真実が、滑らかに口から零れるのは。
「…なんてね」
その後すぐに、それを打ち消すように中身のない軽い息が出て。
その息が一つの灯りを消してしまって。
「消えちゃった」
風情のないチャッカマンで速やかに灯し直そうとした時に。
「そっか」
隣から伸びた優しい手が、隣にあったロウソクでその火を灯してくれた。