福嶋と私は頂上で他のカップルと重ならない様にと十五分近く待ってから、やっと灯されたロウソクの火を頼りに真っ暗な道を歩く。

流石におばけ役はいなかったけれど、外灯が一つもない林の中を歩くのはそれだけで充分に怖くて。

「わ、」

どんな小さな音にも過剰な程敏感に反応してしまう。

「福嶋、怖くないの?」

とても遠くから聞こえてくる女子の悲鳴や、何かが飛び立つ音や自分で踏んだ草の音。

昼なら何のこともない音に、肩がずっと竦んでいる。

「別に」

横で悠然と歩く福嶋は、時々現れる丘の上へと導く矢印を確実に捉えて今いる場所を把握する。

「さすがね」

どんな状況でも一人落ち着いている福嶋の横顔は、下からロウソクで柔らかく照らされているけれどいつも通りにとても端整でかっこよくて。

「福嶋、きゃあっ」


それを伝えようと口を開いた時に突然何かが横切って、そのあまりに大きく聞こえた羽音に悲鳴を上げてしまった。