「あ…あの、ふ、くしまくん。」

と、ずっと黙って固まったままだったサカキが震え波に掻き消される程小さい声で呼び掛けてきた。

「ん?」
「…あ、しらゆきさんって。」

其方を向けば彼の顔は此方を向いておらず、髪に顔を隠し白い生地を握りながら裏声ったそれで白雪と言う。

「あ、昔から…ああいう人なの?」
「ああって?」
「誰にでも分け隔てない、人」

それが、何がきっかけだったのか。小動物の様に顔を上げ言葉も少しずつ滑らかになっていく。

凄く濃い黒目をしているんだと初めて気付く。

「ああ昔からだな」
「すごいね…白雪さんに助けられた人沢山いるんだろうね」

そういうという事は、彼自身も白雪に手を差し伸べられた事があるのだろう。

差し伸べた本人は全く気付いていないだろうが。

「さっき、白雪さんに、素敵な特技があるんだからそれを自分の為に使えば良いのにって言われて。」

そういとも簡単に言い放つ白雪の、治らない癖と共に微笑する顔が直ぐに浮かんだ。

「周りにこれ以上嫌われない様にって身に付けた事が特技になるんだなって。」

あいつのそういうところは恐らく治らない。

白雪自身、抑えようとはしていても治そうとはしていないから。