「ちょっと付き合ってくれ」
「なにに?」
「時間潰し」

上品な音でその重厚な扉を開けて白雪と俺を受け入れたそれに乗り込み、温泉やレストランがある階の数字を押す。

無駄な音が全て塞がれた無機質な小さな空間が、ゆっくりと上っていく。

「うーん、じゃあアイス一つで私の時間売ってあげる」
「…売ってたか?」
「確認済みです」
「了解」

端と端程離れる訳でもなく、触れ合う程近づく訳でもなく。

程良いきょりで緩やかに会話を続ける。

まるで白雪と俺の本当のきょりを示している様だと思った。