初めはどうして引き返してくるんだろうと思っていたんだけれど。

「私ああいうの全然気付かなくて、入って行ったりしちゃうから」

いつもそのまま進んだ先にいた二人がいつの間にか、早ければ次の日には付き合っていたりする。

それを一年の間に何度も見て繰り返してきてこの春やっと、その不思議な行動の理由が分かった。

「助けられてるの」

それからは、サカキくんが引き返してくればその先には行かない様にしている。

今日お風呂の前に両思いになったと喜んでいた子だって、先週彼が引き返してきた後に教室に戻ってきた子と男子だった。

「あれは…迷惑かけたくないしこれ以上嫌われたり無視されたくないから周りを見てるだけで…助けてるなんて…。」

どんどん声が小さくなっていってしまう彼が握るがま口の中で、小銭が擦れ合う音が響く。