サカキくんの声は小さくて聞き取り辛いけれどいつだって彼そのままに優しい。

「そっか。じゃあここで待ってた方がいいのかな」
「え…。」

目が何度も左右に動き、小さな手ががま口を強く握ったのが見えた後。

「ん?」
「ああの…信じてくれるんだなって。」

自動販売機の稼働音に掻き消されてしまいそうな位に小さく、振り絞るような声で彼はとても不思議なことを零した。

「ええ?サカキくん空気とか人の考えてること掴むの上手じゃない」

顔を跳ねる様に上げて僅かに見開かれた彼の目と、やっと視線が繋がった。

凄く濃い黒目なんだと初めて気付く。

「サカキくんってたまにどこかへ行ってもすぐ引き返して来たりするでしょう?」
「あ…。」

教室を出たばかりなのに引き返して机に戻ったり、角を曲がった途端にまた引き返してきたり。

彼は時々不思議な行動をする。