お風呂セットを抱えエレベーターへと続く廊下の手前でみんなと別れて、すぐそばにある休憩所に足先を向けた。

もう男子の声は聞こえなくなっていたから、福嶋が待っているはずと駆け足気味に向かったのだけれど。

「あれ?」

そこにはまだ誰もおらず、数脚のソファと売り切れのランプがいくつも光る自動販売機だけが寂しそうに佇んでいた。

「どうしたんだろ福嶋、」

数分福嶋を待っていたけれどなかなか足音は聞こえてこなくて。

一度部屋に戻って荷物を置いてから福嶋の部屋を訪ねてみようかと模索しはじめた頃。

はたはたと、漸く一つだけの足音が聞こえてきた。

「福嶋、って、サカキくん?」

福嶋だと決めつけて振り返ると。

「わっ!あ…あ白雪さん…!」

小さい目を一重瞼と焦茶色の髪で半分隠して驚くサカキくんが、芥子色のがま口から小銭をころころと落とした。

「これで全部だと思うんだけど」
「あっ…。あっ、ご、ごめんなさい。」

それを拾い上げて渡すと、何故かアタフタしながら謝られてしまった。