部屋に戻ってすぐに自分の個性が詰め込まれた鞄からお風呂セットを取り出す。

「あっそのリンス使ってるの?!ねえどんな感じ?いい感じ?」

一緒の個性があれば共感しあい、違う個性があれば追及しあう。

こういう感じは教室とは大差なくて。ただその個性の数が多いだけ。

だから結局教室にいる時と変わらない話題で盛り上がってしまうわけで。

「そうそうっ!前のCMも可愛かったけど新しいバージョンも可愛いよね!!」

時間は簡単に過ぎていく。

「もうそろそろうちらの時間じゃない?行こ。」
「ほんとだ」

気づけばもうすぐそこに、私たちのクラスの入浴時間。

それはつまり、みんなが身体の解放感と一つの場所を共有しあう特別感に嘱されて、相手の心まで裸にしてしまおうとする時間がやってきたということで。

「姫いこー!」
「うん」

楽しみ。本当に楽しみ。

けれど、一つだけ楽しみからはずれた場所で燻っている。

(聞かれるんだろうな)


期待と高揚。不安と予感。二種類の混沌とした感情で、抱えたお風呂セットが少しだけ鳴いた。