ビュッフェを制覇したぬき顔負けのお腹で温泉セットを取りに部屋へとまたゆらゆらと歩く。

「誰かが入る前に入り込まないと!こういうのは先手必勝なのっ!」

点呼の後にどうやって男子の部屋に忍び込むか、全然忍べていない声量で話すリカを静止しながらもどうしても隠しきれない興奮にみんなの表情は緩んでしまっている。

リカお目当ての部屋、と言うよりほとんどの人お目当ての部屋は勿論、福嶋のいる1208号室。

相変わらず福嶋はモテる。すごく。

この旅行の僅かな緩みを密かに狙うみんなが福嶋を見る目は、いつも以上に熱を孕んでいて。

そういう雰囲気を掴むのが下手な私でも分かるくらい、キラキラ光って見える。

廊下を歩く顔触れはいつもと変わらないのに。

「明日お揃いの何か探そうよ!」
「露天風呂あるんでしょー?」

「これ可愛いー!」

跳ねる声もみんなから溢れる雰囲気も。全てが光って見える。