白雪は指定のベストカーディガンを羽織り、細いチェーンに金色のリボンが揺れるブレスレットを白い手首で揺らしながら、戦ぐ花の様な声で笑う。
そして俺に一瞬だけ微笑した後、女子が固まるベランダへと小さな風を残して歩いていった。
ああいう仕草が自然と出来てしまう奴なのだ。
「あー!今日も他とは五段階は違うよなー。南無南無。」
「俺さっき校門前で微笑みかけられちった!次は俺かもなー。」
「中田にはもったいねー!」
白雪はああいう、誰もが向けられる度無意識に鼓動が跳ねてしまう様な仕草を昔から備え持っている。
だから先程の微笑にも白雪にとっては恋愛として特に意味などない。
《みんな面白いね》
恐らくその程度。
「いいよなーあんな美人と幼幼馴染みだなんて。羨ましすぎる。」
「そんなんじゃねえよ」
幼馴染み程近くもなく、かと言って知り合いという程遠くもない。無論、恋人同士でもない。
12年来のクラスメイト。それが白雪と俺の関係だ。
今の白雪と俺にとっては。