白雪側に落ちていたホッチキスの芯や机を片付けていた時に、手伝うのを諦めた白雪が俺を手招いた。

普通なら羞恥心が働いて言えなくなる様な事をさらりと放つ白雪は、白雪と俺の声以外に何も響かない教室ですら遊園地に来たかの如く楽しそうに笑う。

”むこうから見たこの星って何色に光ってるんだろうな”

横で空を見上げ届く筈の無い星に笑いかける白雪は、小学生の時に俺が部屋のベランダで白雪に聞いた質問と同じそれを放ってきた。

”きっと、青だよ”

その時も、白雪は今と同じ陽だまりの中で開花した花の様な笑みだった。

白雪は覚えていないだろうが、俺は至極鮮明に覚えている。

”きっとどこまでとおくの星からでも”
”この星は青く光ってみえてるのっ”

その瞬間が。

”この星は、とてもうつくしいから”


恋を自覚した瞬間だった。

”フウくん、きれいだねえ”

それから十年。白雪と俺のきょりはその時よりも随分と広がってしまった。

「…ほら、白雪行くぞ」
「あっ待ってよ福嶋、」

だから白雪と俺は、互いに苗字呼びのクラスメイトなのだ。