「白雪、」

薔薇色と茶色を丁寧に混ぜたような、美容師志望の友人曰くオレンジが混じったピンクブラウンの髪を靡かせながら、一人の女子生徒が横に立った。

「姫!」
「おはよー姫。」
「今日も美人だなあ。」

その女子生徒は、同じ鉄色のスカートを着ているのにも関わらず。

「私も冬服だけどみんな文句ある?」

幻か願望かまた違うものだったのか判然としないままの風とは違う、その女子生徒が自ら生む風を纏い。

誰もが鬱陶しそうに熱気を扇ぐ中で、その女子生徒だけがまるで風の世界にいる様に爽やかに見えた。

そう言えばこの女子生徒も夏はあまり好きではないと言っていたなと思い出す。

”冬が一番好き”

そう言いながら首を傾けていたのも一緒に。

「ないっす。」
「今日も美人っす。」
「好きっす。」

多勢に無勢という諺は、この女子生徒の前ではその意味を無くす。

無勢の鶴に多勢の雀。そんな諺があればそれこれがこの女子生徒には合致する。

「あは、なあにそれ」

その女子生徒───白雪の首を傾けながらの笑い方は、幼稚園の頃からの癖だ。