誰もが喧騒と放心が混沌し、たこん、とした表情で迎えるホームルーム直前に上級生に呼び出され、北校舎へと伸びる渡り廊下手前の空間で対面していた。
整えられた目の上で綺麗に揃えられた前髪を持つ彼女の目は、細かく左右に動かしながら此方の回答を待っている。
その視線の動きを見ている間、短い沈黙があった。
「すみません。お応え出来ません」
忘れ去られたその空間は上手く循環出来ず滞った古い空気で少し埃臭く。
初めは何故このタイミングでここなのかと思っていたが、籠る喧騒が響く誰も居ない廊下で理解した。
「やっぱり…理由聞いてもいい?」
授業が終わった開放感で騒めく教室内では、誰が抜けているのかは判断し辛く。
抜けた気と持て余した熱気のまま全員が教室に入り込んでいる為、廊下には喧騒ばかりが響き誰かが此方へと向かってくる気配はない。