「幸、碧!なに止まってんだよ」


「早く行こうぜ!」



いつの間にか随分先を歩いていた遥陽と要が、わざわざ引き返してきてくれた。


顔の熱を冷ましてごまかす俺をよそに、碧はからかいモードをオフに切り替えて「おう、今行くー!」と駆け寄る。




「幸も早くしろよー!」



返事をしていない俺に、遥陽が声をかける。



「わーってるよ」



いつもの俺らしくない自分にわけがわからなくなって、投げやりに返答する。



あー、暑い、暑い!熱い、じゃなくて、暑いんだ!

無意味に髪をかきあげた。





ただ女子とぶつかっただけ。


そう、それだけだ。



……なのに。



彼女の笑顔が、後ろ姿が、頭から離れない。