たった一瞬だったのに、こんなにも夢中になって。
彼女の頬を彩っていく色が、俺にも伝染するんだ。
「ケガはない?」
「うんっ」
「じゃあ行こ。同じクラスだよね?」
「そうだよ。これからよろしくね」
「また面倒を見なきゃいけないのか……」
「ちょっと何それー!」
笑い合いながら、彼女が通り過ぎていく。
俺の存在に気づかずに、目もくれずに。
心臓が軋んで、痛む。
けれど、苦しくはない。
どれだけ締め付けられても、彼女を見つけられた喜びのほうが勝ってしまうんだ。
「幸?おい、こーう?」
「っ、み、碧?」
「なに固まってんだよ。行くぞ」
「お、おう……」
こんなにも胸が高鳴ったのは、文化祭以来だった。