あれは、小学校入学前。
近所の公園で、ベンチに座って、友達を待っていた。
大好きな絵本を抱えながら。
保育園の友達の間で、流行っていたのだ。お互いにお気に入りの絵本を持ち寄って、読み合いっこする遊びが。
その日もその遊びをする予定だった。
楽しみすぎて早く来すぎた私は、退屈だったから、1人で絵本を読んでいた。
それはお母さんが、誕生日にプレゼントしてくれた絵本。
『りんごと同じ名前の果物のお話だよ』
今となってはなぜ気に入っていたのか思い出せないが、夢中になって、何度も何度も読んでいた。今も好きな絵本だ。
すると、
『何してるの?』
ある男の子が声をかけてきた。
黒髪が似合う、大人びた男の子だった。
絵本を覗き、『あっ』と笑顔を浮かべる。
『それ知ってる!俺も好きで、よく読んでたんだ』
私の好きな物が、好き。
それだけで一気に親近感が湧いた。
すぐ仲良くなって、一緒に絵本を読んだ。