「サンキュ」
遥陽も俺の肩に腕を回す。整った横顔は、若干照れていた。
「あー、何そこ腕組んでんだよ!」
「ははっ!何それ、仲良しアピール?」
「なんだよ、混ざりたいのか?」
「バカっぽいからパスー」
「碧にバカっぽいって言われたら終わりだよな」
「それな」
「どういう意味だよ、それ!!」
「あははっ!」
ムッと口を大きく曲げる碧。
おかしそうに爆笑する要。
ごめん碧、と悪気なさそうに謝る遥陽。
要につられ、噴き出してしまった俺。
4人でいる時の雰囲気は、騒がしくも落ち着けて、心地よかった。
やっぱダチはいいな。
こうやって、なんの遠慮もなしに笑い合える。
本音を言い合えるこの関係が、好きだ。
変な悩みでいっぱいいっぱいになったり、名前のない感情に振り回されたりしたくない。
こんな風にバカみたいに過ごせれば、それでよかった。
楽しければなんでもいい。
少なくとも、今この時だけは、本気でそう思っていた。
忘れられない出会いを残した、高校初めての文化祭。
まっさらな想いを上書きするくらいの最高の思い出は、俺たち4人の友情を深めた。
まるで、嵐の前の静けさのような、ありふれた日常であり変化の兆しだった。