廊下を歩いてるうちに、赤みが落ち着いていった。



碧は口には出さず、「気になるなあ」と視線で訴え続けている。


ぶっちゃけ、ウザい。だったら「教えろ!」と直接言われたほうが、まだマシだ。




教室に着いた頃には、赤面状態から抜け出せていた。



「はよー、幸、碧!」

「おはよ」


後方の扉から入ると、要と遥陽に挨拶された。


挨拶を返し、廊下側から3列目の一番後ろの席に、カバンを置く。ここが俺の席だ。



「幸」



ふと名前を呼ばれ、横を向く。


碧が自分の席に行かず、じぃーっと俺を見据えていた。



う……。



こいつが「犬系男子」と、女子たちに可愛がられてる理由がわかる。


愛犬が飼い主に「待て」と指示され、プルプルしながら待ってる。その様子に、今のこいつは酷似してる。プルプル震えてはいないけど。




どうして、俺の恋なんかをそんなに知りたがるんだか。




『今の幸を見てると、昔の自分を思い出して応援したくなるんだよ』



碧も、俺みたいに焦って、こんがらがって、無意識に行動したのだろうか。