なんて言えばいいのか、わからない。
さっきぶつかった程度の相手の名前を知りたい。
なんて、変な話だろう?
人によっては「気味悪い」と感じるかもしれない。
考えることは許されても、実行できっこない。
「なんでもねぇよ」
はぐらかすしか、ねぇじゃねぇか。
気になったって、どうせ……そう、どうせもう会えないんだ。
この気持ちが一体なんなのか、知ることさえできない。
もどかしくてたまらない。
「……なあ、幸」
「ん?」
「よくわかんねぇけど、頑張れよ」
遥陽は、碧とは違って、さっきの光景を目撃していない。
……はずなのに、何もかもわかりきったようなエールを送ってくれた。
察したってこと、だよな?